海に光るもう一つの世界

立山の雪解け水が富山湾に注ぎ込む季節になると、春の訪れを告げる蛍いか漁が始まる。
蛍いかは通常は水深200から700mの深海に生息し、晩春から初夏までが産卵期で数十万匹の群れが岸に押し寄せてくる。蛍いかの放つ青白い光は宝石のように美しく、光のページェントのようにきらきらと光る様は幻想的だ。その妖しいまでに美しい群遊海面は国の天然記念物になっている。

蛍いか漁は普段は深海に生息し、夜になるとプランクトンを求めて海面近くまで上昇する蛍いかを事前に仕掛けておいた網で引き上げる漁法で行われる。漁船から網を引き上げると大量の蛍いかが青く光を放ち、海面は燐光の光炎となり美しい光の風景となる。

また、新月の夜、蛍いかが砂浜に打ち上げられて青い光を放つ「身投げ」という光景がみられることがある。月明かりがないため方向感覚を失って浅瀬に向かい、波にさらわれて起きる現象だといわれているが、波打ち際に光の煌めきが広がり神秘的な光景となる。

 

image (C) Will Ho