月の明りに照らされて

日本人は古くから月を愛で、月を信仰してきた。
月について、季節ごとや月齢ごとに多くの名称をつけている国は、日本だけではないだろうか。そこには月の光を敵対視し人間にとって悪として扱う西洋人の認識と、大きな差異が生まれている。

日本人にとって月の光は、神秘的でありながら生活の指標を示すと共に、この世のすべてを優しく包み込む光として大事な心の拠りどころであった。この月の光に対する心の持ち方や考え方は、自然を受け入れ、愛し、自然と共に寄り添って生きてきた、固有の基本的姿勢を浮き彫りにしているように思える。

歴史的にみても、幾度となく自然災害の中で多くの苦しみや悲しみを味わった日本人。
しかし今、自然への脅威を改めて感じながらも、その苦しみから立ち上がり、冷静に復興に向けて手を携えて歩み続けている姿がある。
その姿は、太古から脈々と流れている自然への崇拝、共感、共存の精神から出てくる強いパワーを象徴しているともいえるのではないだろうか。

月の光を豊かな感性で受け止め、享受し崇めてきた日本人。
その心の深い精神性に想いを馳せながら、忙しい日々の中で、ときには夜空の月を静かに眺めてその光を観賞してみてはいかがだろうか。

 

image: (C) tacit requiem (joanneQEscober )