夏の夜に飛び交う光の妖精 – 蛍

夏の夜、綺麗でゆるやかな流れの川の水際で、仄かに点滅する蛍の光。
その蛍が、ゆったりと空中を優しく光りながら飛び交う幻想的な光景は、夏の夜の美しい光景の一つである。

蛍はお腹の発光器の中にルシフェリンという発光する物質と、発光を助けるルシフェラーゼという酵素があり、これらと体の中の酸素が反応して発光する。
この現象は熱を持たないので冷発光と呼ばれる。

発光の主目的は求愛行動で、オスがメスを探す時に点滅発光する。
成虫の寿命は1、2週間という短い期間だ。

日本では蛍の種類は約40種類だが、最も親しまれているのはゲンジボタルだ。
体長15ミリと大きく、発光は2から4秒の間隔で光る。その光り方は余韻を残し見る人に心安らぐ癒しの効果があるとされている。

また、陸生のヒメボタルは明かりのない森の中を飛び回る。黄金色のフラッシュ発光で光りながら乱舞する光景はイルミネーションのように美しい。

日本では昔から多くの蛍が存在していたが、環境破壊が進んで蛍は激減してしまった。
そんな現状を憂慮して蛍の復活が叫ばれ、環境整備の試みが日本各地で行われている。そして、蛍の復活に成功して美しい光の乱舞を楽しめるようになった場所が数多く生まれている。

蛍の光が心に郷愁を呼び起こし、自然回帰の灯を灯してくれたともいえるのではないだろうか。