今こそ新しい光環境を – 陰翳礼讃と共に (2)

日本人は古来から農耕生活を営み、自然を愛し、人間の和や情緒を大切にする文化を育ててきました。
繊細な心遣いや感受性は日本人の特性でもありますが、その良さを忘れたような言動がたびたび昨今の風潮としてみられます。
大震災後の助け合う思いやりにあふれた日本人の姿の一方で、利己主義的で乱暴な振舞いが生まれる状況に心痛めることがあるのではないでしょうか。

明るく照らされた環境よりも、少し暗い光環境の中での方が、人間の心の変化による表情の変化などに目がいき、気遣いが生まれるといわれています。
今の明るさから、少し暗い部分もある光環境にすることによって、人が他人への温かいまなざしを持つようになり、表情を読み取り気遣いをする温かい心を取り戻していく可能性もあるのではないでしょうか。

一般家庭においても一室一灯で蛍光灯主体の照明計画が多く見られましたが、一室多灯、LED照明や調光器の利用、など省エネや照明効果を考慮した計画が積極的に受け入れられるようになってきました。そして空調機を天候に合わせて細かく調節するように、照明も日射や求める用途に応じて使い方を細かく調節しながら使用する意識が広がってきました。
それは自然や家族を意識し、思いやりのあるあかりの灯し方とも言えます。

光が人間の感情まで影響を与えることを考えると、心忙しい日常の中でも良い光環境が日本人のやさしい繊細な感情を豊かにする一助になると考えられ、その意味からも光環境の充実はますます重要になると思います。
大震災を経て、省エネ効果のある、程よい陰翳を生むような適切な光環境の重要性を認識している今こそ、計画する側と利用者側が共になって日本人の新しい光環境の創造と確立をするべき時といえるのではないでしょうか。

 

―地球にも人間にもやさしい、思いやりに溢れた光を―
―必要なところに必要な光を―
―ひとりよがりな光ではない光を―

 

省エネに対応しつつ無駄のない美しい光環境の計画を提案し、これからもより良い光環境を様々な視点でとらえ、社会の必要性に応えていきます。