透き通る夜空と星の物語

秋から冬に移り変わっていく季節。
寒さを増しながら次第に空気が澄み、他の季節よりも夜空の星が美しく見える。
冬は上空の大気が不安定なため星がより煌めき、一等星が7個もあることによって星座に華やかさを感じる。

月の明かりは0.2lx(ルクス)と街の明かりが無くともほんのり地上を明るくする光。一方で星の明かりは0.00005lx地上に明かりを届けるわけではない、ほんのささやかな光。しかしながら太古から人々は夜空の星と共に生活する中で星座を作り、数学や天文学を発達させ、また哲学者や科学者、詩人などが神様や伝説を星座に当てはめ文明を築いてきた。

代表的な冬の星座でまず浮かぶのがオリオン座だ。砂時計のような形で一等星と二等星で構成された中央に三つ星が綺麗に並ぶ美しい星座だ。
オリオン座の名前になっているオリオンはギリシャ神話に登場する狩人の名前だ。
その左上にぺテルギウスという赤い一等星があり右下にリゲルという白い一等星がある。

この二つの星は中央にある三つ星を挟んで対立しているように見える。そのため日本人は赤と白の色の対比を源平合戦の赤旗白旗に見立てて赤いぺテルギウスは平家星、白いリゲルは源氏星と呼んでいた。

そのぺテルギウスは赤色超巨星と呼ばれる、もうすぐ消えゆく星である。
半径が太陽の1000倍もある星だが、近年大きさが一気に小さくなり形も歪んで不安定になっており、もうすぐ爆発して寿命を終えると考えられている。
ぺテルギウスは640光年で今私達が見ている光は今から640年前の光だ。
もしかするともう現在、ぺテルギウスはなくなっているかもしれない…。

ぺテルギウスの消滅によりオリオン座の形がいずれ変わってしまうことを思いながら見ていると、ぺテルギウスの星の瞬きが、儚くも美しい輝きに見えてくる。

 

透き通るような夜空…冬はもうすぐそこです。
きらきらした瞬く星たちに想いを馳せて、
星の欠片(かけら)を、両手一杯に集めて。
零(こぼ)れんばかりの、きらきらしたささやかな輝きを集めて。