春の陽気に当てられて

Light+では以前、春の光を表す言葉春の光を表す歌についてご紹介した。
春という優しく穏やかな季節に差すあたたかな陽の光を表した言葉は、そのどれもが希望や喜びに満ちた美しいものだった。今回も、春にまつわる興味深い言葉を紹介したい。

─ 鷹化して鳩と為る

「鷹が鳩に姿を変える」という意味の言葉であるが、実は、この言葉は春の季語なのである。

─ 春の麗らかな陽気によって、獰猛な鷹が穏やかな鳩になる

そんな春の陽気を表したこの言葉は、古く中国で考案された季節を表す方式「七十二候」の三月の中頃に当たるものであり、これを基に日本の気候風土に合わせて改定された「本朝七十二候」というものも存在する。
七十二候の名称は季節による気象や動物の変化を知らせる短文になっており、「鷹化して鳩と為る」はまさに、春を迎えた鷹の様子について語っている。

「春の陽の光が鷹を鳩に変えてしまう」という実際には起こり得ない幻想的な言葉だが、春の陽がもたらす心象的な変化を見事に言い表している。

厳しい寒さに身も心も凍えた冬に、待ちわびたあたたかな陽の光が差し込んでくる。春の始まりを告げる光を浴びて、あなたの心はどんな変化を感じるだろうか。

Photo by OiMax