ひそやかな星の輝き

毎年7月7日は「七夕」で天の川を挟んで夜空に輝く「織姫」と「彦星」が年に1度だけ会うことを許された日とされている。子供のころ、七夕が近くなると笹竹の葉に折り紙で作った飾りや短冊に書いた願い事を吊り下げ、自分の願いが叶うようにと願った経験は誰にでもあるのではないだろうか。

日本の七夕祭りの習慣は、中国から伝わった織姫、彦星の「星伝説」と「乞巧奠(きっこうでん)」と呼ばれる風習などが由来となって生まれたものである。

「星伝説」は中国で作られた話であり、西暦30年ごろから語られている物語である。
日本では奈良時代に伝えられ、庶民にまで広まった。その切ないストーリーは多くの人の心をつかみ、万葉集では130もの星伝説に関する歌が詠まれている。

「乞巧奠」は庭先の祭壇に針などを供えて星に祈りを捧げる中国の風習であり、日本では奈良時代に伝わり技巧や芸能の上達を願って宮中行事として行われていた。食物を供えて星を眺め、香を焚いて楽を奏でて詩歌を楽しみ、神木と考えられていた梶の葉に和歌を記して願い事をしていたという。

その後この風習は「七夕」として江戸時代になってから一般の人も楽しむ行事となり現在まで続いている。
現代の七夕祭りは、織姫と彦星が再会という願いを叶えることができることにあやかって自分の願い事が叶うようにと短冊にいろいろな願い事を書いて笹や竹の葉に飾る行事となっている。仙台の七夕祭りなどは華やかな飾りが飾られる楽しい夏の風物詩となっており、これからも星伝説とともに七夕祭りは続いていくことだろう。

七夕の夜は、古人(いにしえびと)が心を奪われてきた織姫と彦星の物語を思い出しながら、遥か彼方から届くひそやかで人の心に染み入る星の光を見つめて過ごしてみてはいかがだろうか。