絵画に灯るロウソクの光 – ラ・トゥール

夜の風景を描いた作品は17-18世紀にヨーロッパで流行しました。
17世紀前半にフランスで活躍したジョルジュ・ド・ラ・トゥールは聖書に題材を取った夜の情景の作品を残しています。
パン屋を営む家に生まれ、国王付画家という地位まで登りつめたにも関わらず、20世紀初頭に再発見されるまでラ・トゥールはすっかり人々に忘れ去られていました。現存する作品数や資料が少なく、謎多き画家とされています。
ラ・トゥールが好んで描いたのはロウソクのある真夜中の風景でした。「悔い改めるマグダラのマリア」や、この「聖ヨセフ」が有名です。以前の記事で紹介したレンブラントやカラバッジオの作品に見られるような強く劇的な光とは全く異なり、ラ・トゥールの作品では静かな光がその情景を印象深くし、物語を感じさせる役割を果たしています。