「光の世紀」に向けて7 – 光と水産・畜産

光を効果的に利用して水産や農産分野での技術開発を行い、魚や食肉などの生産量を増加させる試みが行われている。いくつかの例を見てみたい。

魚の養殖設備においては2017年に大分県で行われた実験で、緑色のLED照射によるひらめの成長促進効果が認められた。一日12時間緑色のLED光(波長518ナノメートル)を照射した水槽と自然光照射のみの水槽とで飼育したヒラメを比較した。LEDを照射した水槽では光を照射した直後から魚の動きが活発になり餌を食べる量が増える現象が起きた。光を4週間当てた結果自然光のものに比べて体長で1.2倍、体重で1.4倍増が確認された。カレイの仲間の魚でも同様の効果が期待できるという。

魚は水温が低いと餌を食べなくなり体重が増えないため、養殖水槽が低水温の状況での緑光の照射効果は高い。また成長促進により養殖期間が短縮されるため経費の削減が可能となる。

水産業は世界的な異常気象の影響による漁獲量の減少やアジアにおける爆食などにより天然魚の奪い合いが進んでいる。魚の安定供給の実現のためにも今後さらに養殖の果たす役割は大きくなるだろう。LED緑の光は養殖の成長促進効果のある光としてこれからの養殖産業の効率化を図れる光として普及が望まれる。

畜産においては光周期をコントロールして乳牛の健康と生産性の増進に役立てている。牛舎を150~200ルクスの照度で16時間照らし、その後6~8時間を暗闇にする周期が最も効果的で乳牛の乳量が6~15%増加することが分かっている。また、牛は赤色照明を感知しないため、夜間は牛舎内を赤色照明とすることで牛の体内時計を乱すことなく、人間が夜間に効率的に作業することができる。

養鶏場では色が鶏に与える影響は大きく、その特性を利用することができる。赤色光は生殖活動を刺激、促進し増殖速度を高め、飼育消費量の低減につながる。緑色光は幼年期の成長を加速化させ、青色光や幼年期後の成長を促進する。緑色と青色の光の組み合わせによって筋原繊維の成長が促進される。これらの効果を利用してLEDの光をスペクトルの調整することにより筋骨格の発達と体重の増加の促進、排卵鶏の早期成熟の促進、飼料効率の改善、メラトニン産生の改変、産卵の数と質の向上、繁殖サイクルの制御、生殖寿命の延長などの効果を得られる可能性が分かっている。

世界の食糧需要は2030年までに倍増すると見込まれている。その需要に対応できるように環境への配慮をしながら、コストを削減しつつ生産性を高めることができる技術を取り入れていくことはSDGsの持続可能な社会の実現にも通じる重要なことである。農産畜産分野においても光の効果を最大限に利用して生産性の向上を図っていき、安定した食糧事情が実現することを願いたいものである。