「光の世紀」に向けて8 – 紫外線

太陽光に含まれる紫外線には優れた殺菌作用があることは広く知られている。近年、薬品などによる薬害や環境汚染が問題となっており、環境に負荷をかけないクリーン殺菌としての紫外線殺菌が注目されている。今回は紫外線殺菌について取り上げる。

紫外線の殺菌作用は1901年にドイツで発見され、その後1936年にアメリカで最初の紫外線殺菌ランプが開発された。日本では1950年に厚生省が理髪店で紫外線消毒器の設備を義務づけたのをきっかけに紫外線殺菌ランプは一般に普及していった。しかし当時の器具は殺菌線の出力が弱く、殺菌に必要な照射時間が長いという問題があった。

現在では高出力、高性能な紫外線殺菌ランプが製品化されて紫外線による殺菌の実用性が高まり、様々な分野で利用されている。そしてLED・高圧水銀ランプ・無電極ランプ・キセノンランプなど新しい光源が登場し、紫外線と光触媒の組み合わせによる殺菌方法も開発されている。

紫外線殺菌の利用方法には、物質表面に直接照射する「表面殺菌」、水や溶液を殺菌する「水の殺菌」、空気中に存在する菌を殺菌する「空気殺菌」などがあり、その利用は食品分野、衛生分野、医療分野など多方面に広がっている。

紫外線の殺菌力は波長260nm(ナノメートル)前後が最も殺菌作用が強い。その殺菌力は直射日光にも含まれている波長350nmの紫外線の約1,600倍にも達する。照射された波長250~260nmの紫外線は、細菌や病原菌のDNAに吸収され、これらを死滅させたり不活性化する効力がある。

従来は紫外線殺菌には254nmの波長を出す低圧水銀UVランプが主に使用され、他に高圧水銀ランプやキセノンランプなども使用されてきた。最近では260nmのLEDランプや水銀を含まない紫外線エキシマ蛍光ランプが登場し、より環境にやさしい殺菌ランプとして今後の活用が見込まれている。

紫外線殺菌のメリットはあらゆる菌に有効である、有害な副産物を作らない、設備がコンパクト、維持管理が容易で低コストであることなどである。デメリットとしては残留性を必要とする分野(水道水)では使用できない、光が当たる表面部分にしか有効に働かない、大量の水の殺菌には向かないなどがある。

紫外線による殺菌は、鳥インフルエンザ、ノロウイルス、デング熱などのウイルスの殺菌にも有効で空気伝染及び接触感染を最小限に抑制することが期待でき、広く地球上の人間の健康に大きく貢献する殺菌法であると言える。これからの持続可能な社会に必要な光による殺菌法としてより効果的で使いやすい製品の実現を目指して今後も光源や機能の研究、開発が望まれる。