「光の世紀」に向けて9 – 光と医療

Sosaiety5.0時代のヘルスケアは、病気の予防、未病ケアの充実を目指している。また、仮に罹患した場合でもこれまでのような平均的な治療ではなく、個人の属性に合わせた多様な治療が望ましいと提唱している。こうしたヘルスケアによって健康寿命が伸ばされれば年々増大する社会保障費の削減にもつながり、SDGs目標の一つである「すべての人に健康と福祉を」にも繋がっていく。

光による医療への利用は以前より行われてきたが、近年さらに研究が進み新たな利用法が生まれている。その一つが注射針をささずに非侵襲の光の照射で血液成分の測定ができる機器の開発である。

いくつかの例を挙げる。
血糖値測定は高輝度中赤外光レーザーに5秒手をかざすだけで気軽に測定可能だという。
血管、心臓に負担をかける血中脂質は高感度分光装置により測定可能となっている。

さらには光超音波イメージング技術により皮膚のすぐ下にある微小血管の広がり方を画像化し、酸素飽和度の分布を可視化できるようになっている。微小血管の状態が分かることにより皮膚のしみやしわなどの皮膚老化が分かり、美容領域への応用が期待できる。また酸素飽和度は肺や心臓の病気で酸素を体内に取り込む力が落ちてくると下がるため、体の状態を知るために重要な情報である。

光による血液検査は注射の必要がなく、針を腕に差す際の煩わしさ、苦痛や精神的ストレスから解放され,使い捨ての医療廃棄物も発生せず感染症の心配もなく環境にやさしい検査法である。世界の感染症が深刻な地域でも衛生面にメリットのあるこれらの機器を使えば安全に測定でき、世界的な健康・福祉に寄与できることになるだろう。

また近年では、光を当てることで血圧を測定する機器も開発されている。LEDの光を皮膚の表面にある毛細血管に当て、脈波(心拍数に伴う抹消血管系内の血圧・容積変化)をセンサーで感知し血圧を測定する。従来の血圧計のように腕に帯状のカフを巻く必要がなく、測定者に負担が少なく、睡眠時の測定や様々なシーンでの測定が可能となる。

光は生体への侵襲性が低く経皮的な成分計測に適している。予防医学の観点から、家庭や職場で手軽に利用できる光による血液検査測定器は、今後さらにカロリー管理、健康管理技術としてもその利便性が評価され新たな展開も期待される。