高齢者への照明 (1)

―高齢化が進む日本社会において、更に求められてくる光環境とは?

日本は超高齢化社会となり、現在、4人に1人は65歳以上の高齢者である。 これからも高齢化率は上がる一方で日本の社会は様々な分野で高齢者のことを抜きにしては考えられなくなっている。 照明についても光のユニバーサルデザインとも言うべき高齢者にも優しい照明計画が必要になっている。

高齢者の視覚特性について生理的な面からみてみると、以下のような特性が挙げられる。
 
 
水晶体が黄味を帯びたり濁る
―薄暗い場所で物が見えにくくなったり、まぶしさに敏感になる。色の識別が困難になり、色が暗く見えるようになる。

光の変化に対する瞳孔の反応が遅くなる
―特に明るい所から暗い所へ移動する際、目が慣れるのに時間がかかる。

目から脳への視覚信号を伝える神経細胞が減少する
―距離の判断が難しくなり、陰影や色調など細部を見分けることがより困難になる。
 
 
どの症状も個人差や程度の差はあれ、いずれも高齢者が体験することになる症状と言える。 これらの症状は、徐々に変化する性質のものが多く、知らず知らずのうちに症状が進んでいたり、その変化に気がつかない高齢者が多い。 住宅に於いても、若い時に設置した照明器具を引き続き使用し、不快さ、不便さを感じながらもそれに対しての対策をたてている人は少ない。

LEDが普及するようになり、照明のコントロールが柔軟になった現在、光が与える影響の大きさを認識し、住宅や公共施設、病院、その他の建築空間において、高齢者に配慮した照明計画をする必要があると考える。
 
 
■写真:大東文化大学東松山キャンパス (C) Kai Nakamura