高齢者への照明 (2)

高齢者の視覚特性に対しては様々に配慮した照明計画が求められる。物が見えにくい現象に対しては、行動作業に応じて必要な照度を確保することが重要だ。一般的に作業照明は若年者の1.5倍以上の明るさが必要とされている。
この場合、空間全体を必要な明るさまで明るくするのでは、かえって目を疲労させてしまうため、局所的に必要な照度を得られるように計画する。そして好ましい暗さの部分もあると目には優しい。

光の変化に対する順応の遅さに対しては、明るい空間から暗い空間に移る際、照度の差を少なくすることで視認性を保つことができる。その為には居室などの照度と廊下などの照度を近づけるように設定する。また、足元灯や人感センサーなどで夜間の安全な行動ができるように図る。

まぶしさに敏感である現象には、できるだけ輝度の高いものは用いず、間接照明やグレアを抑えた照明器具でやわらかい光を提供したい。特に高齢者は夜間のトイレ回数が多くなる傾向があり、トイレや通路の明るい照明により覚醒すると睡眠に悪影響を与える。できれば、夜間用の低照度のトイレ照明や通路照明の計画を行うことが望ましいと考える。 一般的に外出の機会が少なく、在室時間の長い高齢者は不安感や孤独感に陥ることが多い。 できるだけ快活に過ごせるように、住宅や高齢者施設では快適で楽しく温かい雰囲気を醸し出すような照明が必要である。
 
 
■写真:第一生命 新大井事業所 (C) Kai Nakamura