高齢者への照明 (3)

憩う空間では、色温度の低い、温かさを感じる照明であれば安心して人と接触することができ、積極性も出てくる。高齢者の視力、視覚の衰えを 補うために演色性の高い照明を使用し、人の顔色が血色良く見え、表情が明るく、好意的に見えるようにすることはコミュニケーション能力を高めることにも通 じてくる。また、豊かな光環境を実現するには、空間は一室一灯ではなく、多灯照明とし、空間にメリハリが生まれるような器具配置を計画したい。

高齢者はもともと加齢によりメラトニン分泌が減っているが、一般的に外出する機会が減ることによって日光に当たらなくなり、メラトニン分泌がさらに減少して しまい、眠りの質の低下を引き起こす傾向がある。人間のサーカディアンリズムに即した睡眠、覚醒のリズムを整えるには照明による朝から夜までの光のコント ロールが効果的である。すなわち、朝は覚醒作用のある昼白色の光空間とし、夜は電球色の光空間とする。LED照明により調色、調光コントロールが容易にな り、シーンに応じた制御システムが可能である。

また、室内にいても四季や自然を感じられるような自然光を取り入れることも大切 で、自然光との調和も加味した照明計画によってより心理的にも健康的な生活が生まれると考える。今まで建築、空調関連の高齢者配慮については多くのことが 語られ、実践されてきたが今こそわれわれ照明デザイナーが高齢者にやさしい照明についての多くの提言、提案を行い、老いても快適でより生活を健康で積極的 に楽しむことができる照明計画の確立に尽力すると時ではないかと思うのである。
 
 
■写真:第一生命 新大井事業所 (C) Kai Nakamura