健康と光7―光と精神1




光と精神1―冬季うつ病1

私達人間は光により様々な影響を受けているが、その影響を知り、光と上手に付き合うことは精神的に充実した健康的な生活を送るために大切なことでである。
今回からは、光と人間の精神との関連について取り上げてみたい。

光には、視覚性作用と非視覚性作用があり、光は物を見ること以外にも我々の心身機能にさまざまな影響を及ぼしている。

視覚性作用とは、さまざまな光の情報は網膜の光受容細胞で神経シグナルに変換され、その大部分は視神経を通って後頭葉の視覚野に行き、「物を見る」ために使われ、物の形、色、質感を見ることができる。

非視覚性作用とは光情報の一部は視床下部の視交叉上核に入り、さらに他の視床下部や脳幹部にある重要な神経核に行き、多様な非視覚性作用を発揮することである。例えば、生体リズム調節、覚醒作用、抗うつ効果、自律神経調節、糖代謝調節などである。
光は物を見ること以外にも我々の心身機能にさまざまな影響を及ぼしているのである。しかし我々が非視覚性作用を実感することは少ない。
季節の移り変わりが人間の気分に影響を及ぼすということは、何千年も前から知られていた。季節の変化に起因する新たな病気として1984年にアメリカの研究者が発表したものに季節性感情障害(Seasonal Affective Disorder; SAD)があり「冬季うつ病」と言われる。

冬季うつ病は、秋にその症状が現れ、春先になると回復するうつ病である。
女性に多く、一度発症すると毎年繰り返すことが多い病気である。

症状には次のようなものがある。集中力が減少したり自己否定的になる、無気力感や日中の眠気を覚える、人付き合いが苦痛になる、炭水化物や甘いものを欲して過食することにより体重が増加するなどである。

通常のうつ病とは異なり、比較的軽い症状であり、春になると回復するため、治療をしない人も多いが症状によっては日常生活に支障をきたす場合もあるので注意が必要である。

SADの原因は日照不足である。光の不足により、概日リズム、深部体温リズム、メラトニンリズムが乱れ生体リズムが崩れて発症すると考えられている

当然、緯度が高く日照時間が少ないほどうつ病の発症率が高いが、緯度が低い地域で天候不順になりがちな場所でも発症する。

冬季うつ病の治療、対策は光療法が第一選択であり、SADの約70%の人に何らかの効果が認めるという。

光療法は、2500ルクス以上の光を一日の特定時間帯に、目から取り入れることにより体内時計をリセットしメリハリのある生体リズムを作るものである。自然の太陽光や高照度光療法器具を使用して行う。自律神経に影響を与え、交感神経の働きを活発にし血圧や体温を上昇させて身体を覚醒させる。

光療法では、5000ルクスから10000ルクスの光を使用する場合がほとんどである。また、治療には光と共にセロトニンの合成に必要な必須アミノ酸、トリプトファンの摂取も重要である。

何となく冬になると朝起きにくかったり、過食をしてしまったりということを感じる人も多いのではないだろうか。健康な人でも、冬には脳内セロトニン利用率が顕著に低下するという研究結果がオーストラリアで報告されている。また、太陽光は数時間のタイムラグで脳内セロトニン機能を調整している可能性が高いという。

自分の生態リズムを整えて快適な生活を送るために、朝早起きをして、太陽光をたくさん浴びることを意識して行ってみてはいかがだろうか。

photo by Егор Журавлёв