日本料理と光 (1) – 美しい色の饗宴

光によって際立たせ、一皿一皿に人格と品格を与えられる照明とは何か。

日本料理は、日本の多様な食材を新鮮なままその持ち味を生かして作る季節料理で、自然の美しさや季節の移ろいまでも表現した目にも美味しく美しい料理とされている。栄養バランスにも優れ、健康的な料理としても評価が高い。世界遺産に登録されたことで、世界的にも注目されている。

日本料理の形式には、一般の家庭での料理からお茶のための懐石料理、お酒を楽しむための会席料理までいろいろな形がある。特に会席料理は江戸時代後半に町人文化が栄えて広まったもので現在では日本料理の主流となっている。ここでは日本料理のうち会席料理に焦点を当てて見てみる。

日本料理に大切なものは五法・五味・五色・五覚・五適と言われる。五法とは調理方法のことで生食(切る)、煮る、焼く、蒸す、揚げる等の調理法。五味とは味付けのことで酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の変化に富んだ味を示している。五色とは白、黒、黄、赤、青(緑)の五色でこれらの色がバランス良く配色されると目にも美味しく美しい盛り付けとなる。五覚とは視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚でこれら全ての感覚で料理を味わい楽しむことができるのが日本料理とされる。五適とは適温、適量、適材、適技、適心と表される。適温、適量は料理ごとに適した温度と量を提供すること。適材は食べる人の年齢や性別に合った素材を選ぶこと。適技は技巧に凝りすぎず適度に手を加えること。そして適心はおもてなしの心のこと。以上のような多くの要素がバランス良く調和して、美味しく美しい日本料理となる。

この内、色について見てみると、日本料理は食材が豊富であると共に色彩的にも変化に富んだ料理だ。料理だけでなく、お盆や器、料理に添えられる花や葉で色のアクセントをつけて机の上に色の饗宴が展開される。特に上記の五色について見てみる。赤色と黄色は食欲を増進させる色だが、日本料理では適量が配色されていて美味しそうに感じられる。黒色は全体の色調を引き締める効果があり、西洋料理ではあまり使われない色だが、日本料理では机や器、食材に使われてより料理を引き立たせている。黒い色の机では様々な料理の背景が黒となり、料理を器ごと浮き立たせて色味を美しく演出している。白色は様々な色の中にあってアクセントの役割を果たし、清涼感を醸し出ている。青色は緑色も含めた色で青味として日本料理には欠かせないアクセントの色だ。刺身に盛られるしそやわさびの緑色や食器として使われる竹の葉の緑色などは、素材をより新鮮に見せながら他の色を品格ある色として見せている。

あくまでも素材の持つ色を生かすように作られた日本料理は、器や食材などによる様々な色による饗宴が催され、視覚的にも調和が取れて美味しさを感じられる料理として世界に誇れる料理である。
このような季節に応じた素材本来の色を、光によって際立たせより一層、一皿一皿に人格と品格を与えられる照明とは何か。それを追及して、世界遺産である和食をより良く演出できる一助になるよう貢献していきたい。