日本料理と光 (2) – 視覚芸術といわれる日本料理について

日本料理に最適な照明
―華やかさよりも、仄かな陰影を生む光で美しく魅せる

日本料理の盛り付けは季節や風情を盛り込んだ美しいもので、器の美しさも鑑賞しながら料理を賞味できるとされ、目でも美味しく味わう料理として視覚芸術とまで言われている。
煮物や和え物は中高にこんもりと器の余白を残して盛り付ける。刺身などの盛り付けは日本庭園を模したもので、遠くの山と近くの海というように高低差をつけて盛り付け、ほのかな陰影と奥行き感を生んでいる。
盛り付け方を比較すると、全体的に西洋料理が合理的、対称的、平面的であるのに対し、日本料理は情緒的、非対称的、立体的であり、アンバランスの中に流動感のある安定を感じさせる盛り付けとなっている。

また、日本料理は季節や料理内容に応じて様々な器に料理を盛り付けることが特長である。美食を追及した料理家、北大路魯山人は「日本料理において器は料理の着物」と表現した。「料理は適した器に盛られた時にあたかもその器から出しが出るかのように一段とその味が旨くなる」と語っている。

日本料理の器は素材、形、模様など多種類にわたる。 陶器、磁器、ガラスの他に竹や植物の葉、紙までも食器として使う。 色、形も様々で季節や料理に応じてそれぞれにふさわしい器をおもてなしの心を込めて料理人が選ぶという。春は爽やかで明るい器、夏は涼感溢れる器、秋は渋い柄の器、冬は厚みがあり温かみのある器というように季節感のある器を料理に合わせて選ぶのも料理人の腕の見せ所だそうだ。そして食器には余白を残すように料理を盛り付ける。大体器の 6から7割くらいに料理を盛り、余白も料理のうちとされ、余白を残すことで料理をより引き立て、同時に器の美しさも鑑賞できる。
料理と光についてみると、西洋料理では食器は銀食器やクリスタルガラスなどきらめきを持つものが多く、照明も光を反射してきらめきを生むようなものが好まれる。また、料理も素材を加工してソースをかけたりした調理法で色彩的にも明るいものが多く、照明によってより華やかな雰囲気が高まることが望まれる。

日本料理の食器は漆器や陶磁器などは光を反射するというよりも一旦光を取り込んだかのような抑えた輝きや艶が光によって生まれる。日本料理は素材を生かす調理法で素材の色を大切にしたものが多く、自然の色をきれいに見せる照明、多彩な器と盛り付けを美しく見せるほのかな陰影を生む照明がふさわしいと言える。

素材そのものを生かした料理をより引き立てる器に繊細な感覚で盛りつけられた日本料理は、食器の美しさと料理が醸し出す雰囲気が素晴らしいと世界の人々に評されている。あたかも縁側から日本庭園を見ているかのような美しい盛り付けは、目でも美味しく賞味できる料理として「日本料理は視覚芸術である。」とまで言われる所以である。
 
 
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