ロマネスク建築 (3) – ル・トロネ修道院~光と祈りの空間~

修道院の中心は教会と回廊でそこは厳しい修行生活の場だった。他には寝室、集会室、面会室、があり、どこも装飾的要素が少なく華麗な装飾が一切ないシンプルな空間が広がっている。

教会内には三位一体を表す3つの縦長の窓があり、その上には丸窓がある。

大きな開口部を開けられないという構造的な問題もあり、どれも小さい窓である。しかし、そこから入ってくる光は、空間の中のアクセントとして存在感のある光となっている。

そして限りなく抑えた面積の開口部から入ってくる光ではあるが、空間が神々しさを増し、神聖な雰囲気で満たされる。

中庭に面した回廊の石壁柱の厚さは約1.5mという厚さである。分厚い壁から差し込む光は反射光となって広がり、光と影の織り成す特別な世界を作り出している。回廊には光のグラデーションが生まれ、時間と共に変化する表情豊かな空間となっている。

教会は閉鎖的な空間でありながら、差し込むほの明るい光によって落ち着いた神聖な空間となる。回廊は壁柱からの光によるリズミカルな陰影が生まれ、躍動感のある印象を与えてくれる。

ここでは光が、最大の演出の役割を担っており、シンプルな空間において光がいかに空間に豊かな表情を与え、空間の質を高めて演出することができるかを示してくれている。光の持つ性質を生かして効果的に利用し、計画された修道僧の祈りの空間と言えるだろう。
 
 
photo by Gilles Peris Saborit