「空気と光と友人の愛、 これだけ残っていれば気を落とすことはない」


この格言はドイツの詩人、劇作家、小説家、自然科学者、政治家、法律家であるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)のものである。

ゲーテは晩年、光学の研究に力を注ぎ、1810年には「色彩論」を発表している。
そして「もっと光を!」を最後の言葉にその生涯を終えたと伝えられている。
ゲーテには固い友情で結ばれた10歳年下のフリードリヒ・フォン・シラーという詩人、思想家、劇作家がいた。
二人は共同で作品を発表したり互いに競い合って多くの傑作を残し、ドイツ古典主義と呼ばれる文学様式を確立する。
時には叱咤激励をしてゲーテを支えたシラーの友情は、ゲーテの創作意欲に働きかけて小説や詩劇の傑作を生むことにつながった。
ゲーテは「シラーと出会っていなかったら、「ファウスト」は完成していなかっただろう」と語っている。
1805年にシラーが46歳で亡くなると、周囲の人はゲーテに与える精神的衝撃を心配し、シラーの訃報をなかなか伝えられなかったという。ゲーテは訃報を知ってから数日間泣き続け、「友の死のうちに私の存在の半分を失った」と嘆き悲み、病に伏せってしまったという。

空気、光は人が生きていくうえでなくてはならぬものである。
そして、ゲーテにとって友情は、空気や光と同様に、生きていくうえでかけがえのないもの、生きる力であった。ゲーテがそれほどまでに強い友情で結ばれていた友人がいたことを羨ましくも思えてくる。
長年培った友情という愛情は、窮地に陥った時や、悩んだ時、辛い時などには力を与えてくれ、喜んだ時や楽しい時には一緒にその思いを共感して分かち合ってくれ、時には厳しい助言を、時にはやさしい慰めを与えてくれる人生にとって大切なものである。
今ある友情を大事にして、お互いに良い影響を与えられる人間になって友情を深めていくことができれば、人生もより力強く、豊かなものになっていくのではと改めて思わされる格言である。
 
 
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