「昼の光に、夜の闇の深さが分かるものか」


フリードリヒ・ニーチェ(1844年~1900年)はドイツの哲学者、古典文献学者。
彼の生涯をみてみる。

小さい頃から成績優秀で24歳の若さでその才能を認められ、スイスバーゼル大学の教授となる。27歳の時に「悲劇の誕生」という本を書いたが学会や周囲から認められなかった。その後体調を崩し、大学を辞職し執筆活動をしながら孤独な生活を送る。失恋による傷心、病気による発作、母や妹との不和、売れない著書の、自殺願望にとりつかれた苦悩などを抱えた1883年に代表作である「ツァラトゥストラはこう語った」を書いた。1889年ごろから精神に異常をきたし、1900年に肺炎により55歳で他界した。

 昼の光に、夜の闇の深さが分かるものか

は、著書「ツァラトゥストラはこう語った」に記された言葉である。

ニーチェの哲学の根幹に「永劫回帰」(えいごうかいき)がありこれは今まで生きてきた生はそのまま同じく永遠に繰り返すという思想である。「ツァラトゥストラはこう語った」においてその思想を展開している。そして「永劫回帰を受け入れて喜びも苦しみもすべて良しとすることで超人となれる」と説いている。

超人とは「永劫回帰」の世界で「生の高揚」をとことん実現できる人間、これまでの価値観にとらわれず、絶えず創造的にクリエイティブなパワーにあふれて生きていける人のことである。
ニーチェは若い頃の輝きに満ちた生活に比べて後半の人生は思い通りにいかず悩み多きものだった。そんな苦労に満ちた人生からマイナス部分も含めて人生を肯定しより良い生き方を求めていこうとする彼の哲学が生まれたのだろう。

――光に照らされた目で見える外界の世界とその陰にある心の中にある光でしか見ることができない暗い闇の世界、人は光の部分だけでなく闇の部分にも目を向けて、全てを受け入れ肯定することで真の味わい深い豊かな生き方ができる――この格言に込められたニーチェの思いに静かに思いを馳せてみてはいかがだろうか。