「日の光を借りて照る、大いなる月であるよりも、 自ら光を放つ小さな灯火でありなさい」

森鴎外(1862年~1922年)は島根県出身の小説家、評論家、翻訳家、陸軍軍医、官僚。東京大学医学部卒業後、軍医となり、ドイツへ研究のため留学。帰国後は軍医として勤めるかたわら、小説「舞姫」「山椒大夫」などの作品を執筆。医学、文学の評論や小説、戯曲などの翻訳、ヨーロッパ文学の紹介などを行うなど、多面的に活躍し、多くの業績を残した。

日の光を借りて照る、大いなる月であるよりも、自ら光を放つ小さな灯火でありなさい。

―他のものの力を借りてまぶしく輝くのではなく、たとえ小さい輝きでも自分の持つ力で自分らしく光輝く人間になりなさい。―

他からの光でいくら自分が華やかに見えて輝いていてもその光は自分のものではない。他者の力・光に依存して照らされているだけである。その光がなくなれば自分は全く光ることはできなくなる。受け身になることなく、自分の中にゆるぎない信念を持ち、自主的に行動することにより自分の内から生まれる光こそ美しく、価値ある光となるだろう。

森鴎外は、医者としても功績を上げながら、多くの文学作品を創作した。そして、世界の文学を紹介するために翻訳にも力を入れた。その活躍は、自分の持つ能力を十分に発揮して鴎外しか成しえなかったマルチな活躍と言える。

誰かに頼り、力を借りることによるのではなく、自分の信念や能力を発揮して自らの力で光輝く人間こそ魅力ある人間だというこの格言は、まさに鴎外の生き方を象徴していると言えるだろう。