立ち上る炎に願いを込めて

「五穀豊穣」「商売繁盛」「家内安全」「無病息災」「子宝授け・子孫繁栄」・・・

小正月の1月15日。日本全国で、新春を迎えるための一連の祈りの行事が行われる。
そのクライマックスとなる火祭りは「どんど焼き」と呼ばれている。

まず、長い竹や木、藁、萱、杉の葉などでつくったやぐらや小屋を組む。
その上に、それぞれの家から持ち寄ったお正月飾りの門松やしめ縄、書初めなどを積んで、燃やしていく。
お正月に天から降りてきた年神様は、どんど焼きの煙に乗って天に帰るとされ、それをお見送りするためにこの行事が行われると言う。
持ち寄った物を燃やすだけが目的ではない。
どんと焼きの火にあたると病気をせず健康で暮らせる、この火で団子を焼いて食べると風邪をひかないなど各地で言い伝えがあり、人々の様々な祈願がこのどんど焼きの炎に託されていたことがわかる。

集落と子孫の繁栄を祈り、それを「神火」に託していたどんと焼き。現在では、昔の人々が神火に託した本来の願いが忘れられがちかもしれない。しかし時代にかかわらず火は、ただ熱く燃えて光るだけではなく、私達に圧倒的な精神性を持った存在感で訴えかけてくる。なにより火は、人間が初めて自ら扱うことを可能にした光だ。普段明るい照明の下で生活している人も、このような機会に、「火」の特別な光の力を感じてみてはどうだろうか。

photo by yossy Shan