夏も近づく八十八夜

「夏も近づく八十八夜…」という有名なフレーズは、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。立春から数えて88日目、今年の八十八夜は5月2日。八十八夜を迎えたこの時期、季節は春から夏へと移り変わろうとしている。

この時期になると、霜が降りなくなり安定した気候が訪れ、若葉は青葉へと成長し木々を茂らせる。またこの頃から苗代の籾撒きを始めとした農作業や新茶の摘み取りなどが行われるようになる。
「野にも山にも若葉が茂る…」野山を覆う若く力強い緑の生命力に満ちた景色が楽しめるのは、この季節しかないだろう。

そんなダイナミックな景色が広がる季節にも、光の繊細な表情を伺うことができる。例えば田んぼ畑。薄く張られた水に植えられたばかりの稲の苗。昼には快晴の青空が映り込み瑞々しい緑を際立たせ、太陽の光を受けた一面がきらきらと輝きだす。夕方には、沈みゆく夕日が辺りを茜色に染め上げ、夜と混ざり合いながらゆっくりと水面に溶けてゆく―。

「日和つづきの今日此の頃を心のどかに摘みつつ歌ふ…」心地の良い天気が続く今日この頃、雨の季節がやってくる前に、その情景を心ゆくまで楽しみたい。

 

photo by M Murakami