竹の魅力

春は芽吹きの季節。その春の味覚を代表する芽吹きの食材に「たけのこ」がある。たけのこご飯やたけのこの木の芽和えなどの料理を食すると香り高いその風味に春がきたことを感じることができる。今回は、そのたけのこの親である「竹」について取り上げてみる。

竹の種類は日本に約600種類あると言われている。たけのことして主に食用にされている孟宗竹(もうそうちく)や真竹(またけ)、根曲がり竹などがある。

竹の性質は弾力に富み強靭で熱伝導率が高く均一な太さで繊維がそろっていて割りやすい。
その性質を利用して竹は古くから日本では至る所に使用されていた。伝統的な日本家屋の土壁には竹を芯に塗り込んであり、暑さ寒さ、湿気などを調整し、日本の気候に適した働きをしていた。また、茶道、華道の道具、笛や尺八などの楽器、弓や竹刀などの武具、提灯などの照明器具の枠などにも使用され、竹は日本の文化や生活に密着する素材であった。現在でも床材などに幅広く利用されている。

竹は周りの親竹から地下茎を通じて栄養を吸収することができるうえに、多くの成長点を持つ節がある。栄養と光を得て各節ごとに盛んに光合成を行うことで節と節の間隔が広がり背が高くなる。その成長は非常に速く、一日に80~120cmも成長し、2か月もすれば約20mにもなる。この成長の速さは他の植物にはみられない驚異的な速さである。

そして竹はたとえ何百本の林でも生き物としては1個の個体であり、地下茎でつながった1つの植物体である。それゆえ1本が病原菌で枯れると周辺の竹が全て枯れてしまう現象が起きる。

また、竹は強く光を求める生き物である。竹林が過密になって暗くなると竹は光を求めて外に向かう性質があり、周辺の林に侵入し、占拠してしまう。それを防ぐためには竹林の手入れは怠らないことが必要である。

ところで竹は花を咲かせるのをご存じだろうか。竹の開花は非常に珍しく、真竹は120年に一度、孟宗竹は60年に一度開花する。しかし開花後3か月から半年で竹林ごと全てが枯れてしまう。何とも不思議な習性である。
その不気味さに昔から竹の花が咲くと不吉なことが起きるという言い伝えがあったそうである。竹林は枯死した後わずかに残った地下茎や茎の根元の潜伏芽から再生することが多い。

最近では1960年代に日本では真竹の開花が全国的にあり、国内の真竹林の約3分の1が枯死する現象が起きている。

縄文時代から日本に存在し、古代から祭事や神事に利用されてきた竹は、そのまっすぐに伸びた形に清々しさが感じられ、竹林は日本ならではの美しい風景として日本人に好まれてきた。そして古代の人々は空洞を持つ不思議な竹の形に、一種の自然宗教的な信仰心を抱いていてその心情から「竹取物語」が生まれたとも考えられている。

春の味覚のたけのこを食しながら、強くて不思議な力を持つ竹の魅力に想いを馳せてみてはいかがであろうか。

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