ゴシック建築の光 (3) – ステンドグラス①

ゴシック建築の教会内部に入ると、誰もが崇高な神々しさを感じる。
そしてその空間は名状しがたいほどの神秘性を帯びた深い色彩の光に浸されている。

それまでのロマネスク建築では壁が厚く、窓も小さいものしか設けられなかったが、ゴシック建築では薄い壁となり、壁にはそれ自体が発光体とも呼べる大きなステンドグラスが設けられ、太陽の光を通して様々な色彩の光が堂内に満ちる。

天からの光が姿を変え、ステンドグラスの中で再び輝き出すのだ。ステンドグラスの光は外界の天候により時に強まり時に弱まる。まるで神の息吹に呼応しているかのようである。人々は強い感受性と想像力をもって堂内の神秘的な光を体験したことだろう。

中世の人は宝石を内部から輝くゆえに高貴と考えていた。そして全て宝石は地上に降り注いだ太陽や月の光が大地に浸透し凝固したものと考えていたとも言われる。

ステンドグラスからの光はまるで宝石の輝きのような高貴なる光であり、その光に包まれて中世の人は自らが光なる神の御手のうちにあると感じたであろう。そして光は物質的なものを超えた特別の意味をもっていた。それは神との繋がりである。

幻想的な光に満ちた大聖堂は人々の精神のよりどころであり、人生の希望の場所でもある神聖な場所だったのだ。