光と精神 (9)

光と精神9―太陽光4 天空光

今回は前回の「直射日光」に引き続き「太陽光(天空光)」の利用について取り上げる。

昼光照明として主に利用されてきたのは、天空光である。天空光は時間、季節、天候などによる変動はあるがその幅は直射日光に比べて小さく、やさしい拡散光であり、直射日光がタスク照明とすれば天空光はアンビエント照明とも言える。

天空光を取り入れるのは、主に屋根などに設けられた天窓などである。
天窓から光が差し込む風景と言えば、大きな天窓のあるローマ時代に建築されたパンテオンのドームを思い浮かべる人も多いことだろう。天窓はヨーロッパでは昔から多く取り入れられ、広く普及している。

ヨーロッパで昔から天窓が多く活用されてきたのは、冬季に日照時間が少ないという気候的な理由によるものやカルシウム不足やリン不足による骨の病気である「くる病」の予防の目的もあったとされている。適度な日光浴がくる病の予防に効果的とされていたからである。

日本では明治期の洋風建築で公共施設や大型商業施設などに「トップライト効果」を狙って天窓が導入されるようになったが、一般家庭での普及率はヨーロッパに比べて低い。

天窓の魅力は、自然の光を日常の生活の中で楽しむことができ、生活環境を向上することができることだろう。天窓はプライバシーを保ちながら、明るさと開放感を生むことができる。
通常の窓からの光に比べて3倍の明るさが得られると言われる天窓は直射日光の影響を受けにくい北側に設置するのが温熱環境的にも理想的である。

近年、太陽光利用の画期的なシステムとして、従来ならば自然光を取り入れることができない条件の空間にも太陽光を照射することができるシステムが開発され、太陽光の恵みを受けられる空間が広がっている。
そのシステムとは光ファイバーを使った太陽光照明システムやアルミチューブを使った太陽光照明システムである。

さらに海外では、太陽光の直射日光と天空光の両方をLED照明で再現できるシステムも開発されており、照明による太陽光の再現システムとして注目される。

太陽光と健康について見てきたが、太陽光からは自然の移ろいが感じられ、ストレスを和らげ、集中力が増すという好影響や体調を整える効果を人間は受けることができる。照明計画の中で効果的な太陽光の利用を図ることは、省エネであるというだけでなく、人間の精神に良き影響を与え、健康的で活力のある生活の営みを実現することに繋がる重要な要素であると考える。

photo by chopstuey