花火の光


夜空を彩る花火もまた短いながら空間の照明と言えるのではないだろうか。
諸外国では1月にも記述したように冬をピークに年間を通じて消費されている花火であるが、日本では消費は夏に集中しており、そのほかの季節はあま り需要が無い。
これはかつて納涼開始を祝うとともに水難者の供養や水難事故防止を願うの水神祭をも兼ねた行事「川開き」に使用されていた名残だといわれている。

日本の打ち上げ花火には色の変化や形状に趣向を凝らしたものが多く見られる が、戦に用いる信号弾のようなものが進化した「武家花火」と平面の色や 形を 楽しむ「町人花火」が融合した結果だという。
花火の星は主に色を出す焔色剤、酸素を供給する酸化剤、燃焼を促進する可燃材 の三つの薬剤の混合によってできており、焔色剤の物質や割合によって色合いや明るさが変化する。
明治時代になると、海外から塩素酸カリウム、アルミニウム、マグネシウム、炭 酸ストロンチウム、硝酸バリウムといった多くの薬品が輸入され、それまで出せなかった色を出すことができるようになり、明るさも増した。

江戸時代の川開きで最も規模が大きく有名だったのは両国で、玉屋と鍵屋が両岸に分かれて競って打ち上げる美しい花火に江戸の人々は興じていた。当時屋形船のレンタル代は一艘5両(約40万円)ほどだったというが、川開きを描いた浮世絵には川面に無数の船が浮かんでいるのが見られる。
現在は隅田川花火大会という名前で親しまれており、毎年7月の終わりに開催さ れ、100万人近い人出がある。