光と殺菌4─紫外線殺菌の例

欧米諸国では1980 年代にシックビル症候群が起き、ビルの中にいる人の 多くが、同時期にからだの不調を訴える現象が社会問題となった。 省エネルギー対策の観点から、空調システムの運転が抑制されたため換気が不足し、室内空気が汚染されたことが原因の一つとされている。空気中に浮遊するかびや細菌に加え、ホルムアルデヒドなど建材から発生する化学物質も、原因とされた。そこで紫外線でかびや細菌を殺す「殺菌灯」を換気ダクト内に設置しシックビル症候群に対応した。それ以後現在に至るまで空気環境における殺菌は大きな課題として意識されるようになっている。

紫外線ランプでの空気の殺菌は、老人福祉施設、病院、学校の給食室や厨房、食品加工工場などの空気の除菌や感染予防に幅広く活用されている。加湿器や空気清浄機では殺菌効果は十分に期待できず、紫外線殺菌により浮遊菌を殺菌し悪臭をなくす効果を得られて安全な空気環境を作り出すことができる。

直接空間に紫外線を照射する形式ではその空間が無人になる時間帯に点灯させて殺菌する方法を取る。例えば厨房室であれば作業が終了して作業員が退室してから朝までの間にランプを点灯して室内を殺菌する。

人が居る状態で使用する場合は、照射光を人体に当てないように工夫したものを天井付近に設置して使用する。器具の開放部を上に向けて間接照射式とし、器具と天井の間の空気殺菌を行う。上の空気が清浄になり、下の空気と循環混合し、浮遊細菌の濃度が低くなる。

またどうしても光の照射を受けなければならない場合は短時間であっても目や皮膚を保護するため、透明プラスチックカバーで出来た保護マスクやゴム手袋などを使用する必要がある。

空気殺菌装置としては空間の自然対流した空気を殺菌する方法ではなく、強制的に空気を循環させて室内の空気を殺菌する装置がある。これは装置内に密閉した殺菌ランプにファンで吸気した空気を当てて殺菌してから再び外に排気する方法である。ランプを密閉しているため人が居る場合でも使用でき、自然対流による殺菌よりも高い効果が得られる。

空気中の細菌やウイルスはそれ自体が単独で空気中を浮遊することは少なく、ほとんどの場合は塵埃に付いたものが人の移動に伴って床や着衣から空気中にまき上がって空気中に浮遊するという。空気に照射し殺菌することでこれらの細菌やウイルスを殺菌することができる紫外線殺菌は、比較的安価に設置できる殺菌法として今後も利用されていくだろう。