摩天楼のずっと先の青

摩天楼の一画で、ふと空を見上げる。
超高層の林立するビルの外壁がたちまち空を覆い、
一瞬にして、孤独にも自身の重力だけが重くのしかかってくる。
ビルの無機質な存在に自分が見おろされる様な、非日常的で日常的な感覚。

時としてその感覚が、心地良い緊張感と期待感そして想像力の世界へと自分を誘ってくれるけれど、
時として、焦燥感や無力感、虚無感を感じさせる息苦しい世界へと呑み込まれそうになる時がある。

そんな不条理な感覚のコントラストから逃避するかのように、
五月晴れの中、摩天楼の喧噪から離れてみる。

碁盤の目に仕切られた街に優しく佇む、空と緑と光の射す空間。
自然と調和できる、大切な癒しの空間。

樹々の有機的なしなやかな曲線と、光によって生まれる色彩の豊かさ。
無条件に、素直な在りのままの自分を蘇らせてくれる空間。

束の間の空間に、再び空を見上げる。

樹々の重なり合う枝葉の奥に見える澄んだ青い空に、意識が溶け込んでいく感覚。
心に再び温かい何かが通った気がした。