雛祭り – ぼんぼりのほの灯り

—雛祭りのぼんぼりの光から読み解く、昔の日本の結婚式の姿とは・・・?
 
 
3月3日は雛祭り、桃の節句である。

この雛祭りは古代の中国で行われていたお祓(はら)いが起源と言われている。中国には3月3日に災厄を祓うために水辺で汚れを祓う禊(みそぎや、盃を水に流して詩を読む「曲水の宴」の風習があり、これが遣唐使により日本に伝わった。

その後日本での紙をひとの形にかたどった「ヒトガタ」を使った禊の儀式を結びつき、宮中行事として次第に変化したといわれている。 そして雛人形は江戸時代に儀式と遊びに分かれていた人形の役割が結びつき、「災いを避けるために嫁入りの道中は人形を抱く」という習慣ができ、現在の雛人形の原型となった。

雛飾りの一番上段の端に置かれるのが「ぼんぼり(雪洞)」である。
「ぼんぼり」とはロウソクたてに長柄をつけた、紙や絹で覆いのある灯具で下座に台座をつけた行灯の総称である。  ぼんぼりは江戸時代には主にぼんやりとしてはっきりしない様や物が薄く透いてぼんやり見える様などの意味で使われており、ぼんやりと灯りが見える灯具という意味でついた名前であると言われている。 また、他説では火袋を通した間接的な光が柔らかい光であるため、ほのかに見える意味の「ほんのり」が転化したとも言われている。 このぼんぼりは結婚式を模した雛人形にはなくてはならない物である。

なぜならば江戸時代には結婚式は夜行われていたからである。具体的には、亥 (猪) の刻 (夜9時から夜11時の間) に式は行われていた。 夜の式典ではぼんぼりの灯りにより明るさを採っていたとされている。
昔の結婚式に思いを馳せて雛人形のぼんぼりに灯りをつけてみよう。

室内の照度を暗くすると、雛人形達のやさしい表情がぼんぼりのほのかな光で陰影を帯びてさらに柔和で温かい表情に見えてくるのではないだろうか。

いつの世も女の子の無事を願う気持ちに変わりは無く、昔から続いてきた雛祭り。雛人形を飾ることで子供への温かい思いを表す日本の風習は、ぼんぼりのほのかな灯りの温かい光を受けながらこれからも美しく雅な年中行事として受け継がれてゆくことだろう。
 
 
Image: (C) Kentaro Ohno