彼岸の日




9月23日は秋分の日でお彼岸の中日である。春分の日と同様に、昼と夜の長さがほぼ等しくなる日である。彼岸は二十四節気の一つで、春分、秋分を中日として前後各3日間を合わせた計7日間を彼岸の期間とし、初日を彼岸の入り、最終日を彼岸明けと呼ぶ。国民の祝日法では、春分の日は「自然を讃え、生物を慈しむ」秋分の日は「先祖を敬い、亡くなった人を偲ぶ」となっている。

「彼岸」の本来の意味は煩悩を脱した悟りの境地を言う。
仏教では、生死の海である三途の川を渡って到達する悟りの世界を「彼岸」(ひがん)と呼び、その反対側で私達が生きる迷いや煩悩に満ちた世界を「此岸」(しがん)と呼ぶ。

「彼岸」は西に、「此岸」は東にあるとされ、太陽が真東から昇って真西に沈む春分と秋分は彼岸と此岸が最も通じやすくなると考えられ、先祖供養をするようになったと言われている。

日本で初めて彼岸会が行われた記録は「806年、崇道天皇(すどうてんのう)のために諸国の国分寺の惣に命じて「七日金剛般若経を読まわしむ」と「日本後紀」に記載がある。

彼岸は天皇の詔として始められた行事であったが、人々の中にいつしか祖先を供養する行事として定着していった。
また、春の種まきや秋の収穫と結びついた自然に対する感謝や祈りが、先祖に感謝する気持ちにつながり、お彼岸は日本人の大切な行事となったとも言われている。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、彼岸を過ぎる頃にはそれまでの暑さや寒さも和らいで感じられるようになる。太陽の光もそれまでとは少し違った表情になり、過ごしやすい季節への移り変わりを光の中にも感じることができる。

太陽の光の動きを見ながら遥か彼方にある極楽浄土に思いを馳せると共に季節の移ろいに目を向けて自然や祖先への感謝の気持ちを表した彼岸は、これからも日本人の心の深層に触れる大切な行事として営まれていくことであろう。

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