灯火可親

中国、唐中期を代表する文人・政治家である韓愈の言葉で「燈火(とうか)親しむべし」というのがある。これは、涼しくて長い秋の夜は、ともしびの下で読書をするのに良いという意味で、秋が「読書の秋」と呼ばれる由来になっていると言われている。

江戸時代、日が沈むと辺りは闇で、月の明るさは今では想像できないほどだった。そんな中、灯りは大変貴重なもので、人々は植物や動物の油を利用した灯油(ともしびあぶら)を燃料に、行燈(あんどん)などを灯りとしていた。菜種油は、においも少なく明るいことで評判だった。ただ、高級品であったため、一部の財力のある家や接客業などしか利用できなかったという。魚油の値段はそれより安かったため、庶民はそちらを利用した。においやすす等の問題があったが、それでも貴重な燃料。ロウソクは行燈の5倍近く明るかったがさらに高級品で、庶民が日常的に使用するような代物ではなかった。

一方現代では、低燃費で機能的、好きな色味や明るさの灯りを気軽に選んで利用できるようになった。1つの照明器具でも色味を変えられたり、明るさを調整してシーンごとに好みの演出が楽しめる。デザインも様々で、かつてのようににおいやすすを気にする必要もない。

「燈火親しむべし」の秋。一日の終わりのくつろぎをちょっと素敵なものにするために、落ちいて本を読みたくなる自宅の光環境を整えてみてはどうだろうか。