夏至祭の焚火

夏至は北半球では、一年で最も昼の時間が長い日である。今年は6月21日が日本の夏至となる。日本では夏至に特別な行事を行う所は少ないが、北欧や北東ヨーロッパでは太陽の恵みに感謝する楽しいお祭りの日「夏至祭」として夏至の日を過ごす。

スウェーデンの夏至祭は、スウェーデンで最も大切にされている日だと言われている。
町の広場に夏至柱を立て、その周りを花の冠をかぶった女性や民族衣装の人々が一晩中手をつないで踊ったり歌ったりする。夏至柱は大きなものでは20 mを超える大木に野の花々やモミの葉などを美しく飾り付けたもので豊穣のシンボルとなっている。
祭りの食事は、ニシンの酢漬け、ジャガイモをゆでたものやサーモンなどと一緒にお酒を楽しみ、食後にはこの夏初めて採れたいちごを味わう。

フィンランドでは夏至祭には昔から「コッコ」と呼ばれる薪を燃やして焚火をする習慣があり、夜になると湖畔や開けた空き地で勢いよく燃える焚火を見ることができる。
夏至の夜は超自然的なものと結びついていると昔から考えられており、悪魔がその辺を歩き回ると信じられていることから、悪霊(悪いもの) を追い払うために焚火をたくようになったと伝えられている。

リトアニアでは丘の上で皆で夜通し大きな焚き火を囲む。その光がより遠くまで届けば届くほど秋の収穫もより豊かで稔りあるものとなると信じられている。そして焚火は福を呼ぶとされて、新婚夫婦が焚火の火を持ち帰る習慣が残っている。

デンマークの夏至祭りでも焚火は不可欠で、夏至の夜に「魔」が活発になると信じられてきたために魔女の人形を焚火で焼いて「魔」を焚火で追い払うという儀式を行う。
ラトビアやウクライナ、ロシアなど多くの国では燃え盛っていた焚火の火の勢いが衰えると翌年の健康を祈って焚火の上を飛び越える「焚火越え」が行われる。

夏至祭は夏が短く貴重な北欧や北東ヨーロッパでは、太陽を崇め、その恵みに感謝し、沢山の恵みを願う特別な日となっている。そして悪霊や悪運を駆除し、幸運と夏の終わりの豊作をもたらすものとして夏至祭には焚火が欠かせない。

北欧の人々の夏至が過ぎても陽が長く出ますようにという願いを込めて今年も盛大な夏至祭りが各地で行われる。太陽への憧れと焚火に込めた願いがこの夏至祭を毎年にぎやかに催す原動力となっているのだろう。