秋の終わり

秋も終わりに近づき、冬の始まりが感じられる11月。

11月は「霜が降りだす月」に由来して別名「霜月(しもつき)」と呼ばれる。
旧暦では11月を冬に数えており、「霜」は冬の季語である。

秋と冬の間。そんなこの時期にぴったりな和歌をひとつ紹介したい。
 
 
「おきあかす 秋のわかれの 袖の露 しもこそむすべ 冬やきぬらん」 藤原俊成
─秋が終わる夜、眠れずに夜を明かしてしまった。
名残惜しさのために袖へこぼれ落ちた涙は霜となった。もう、冬が来たのだろう。
 
 
旧暦では季節の変わり目の日がはっきりと決められており、この歌は「秋はこの夜で終わり、朝を迎えればもう冬が始まる」という立冬の頃を詠んでいる。
小さくとも確かな冬の到来を目の当たりにして秋との別れを惜しむこの歌は、昼の短さ、風の冷たさ、張り詰めた空気の静けさ、星空の凛とした輝き、舞い散る落ち葉、かじかむ指先、白く溶け込んでいく吐息…など、日常に起こる些細なことから不意に冬に気が付く、この時期の私たちの心情と結びつくものがある。

朝陽を受けて繊細に輝き、あたりを白く染め上げる霜の降りた景色に冬を感じる日も近い。
秋という豊かな季節との別れには寂しさを感じるが、もう少しで、凛として澄み渡る純白が輝く季節がやってくるのだ。