太陽が生まれ変わる日─冬至

12月22日は一年で最も夜が長く、昼が短い冬至の日である。冬至を迎えると、これから始まる厳しい冬を思い、身の引き締まる思いになる人が多いのではないだろうか。
しかし冬至は、その日を境に太陽の光が増してくる日でもあり、世界では古来から冬至を祝う風習があった。

中国では冬至は「すべてが上昇運に転じる日」とされ、紀元前には冬至から新年が始まるとして冬至を祝う祭典が行われていた。現在でも冬至に先祖や神様を祀って厄払いし、一家団欒で宴を楽しむ風習が残されている。

北欧の国々では古代には冬至を「太陽が生まれ変わる日」としてお祝いをしていた。この冬至祭は「ユール」と呼ばれ、冬至以降に太陽が再び力を取り戻すことに感謝し、太陽のパワーにあやかって厄払い、開運を祈る思いが込められた祝福のイベントであった。このユールはのちにキリスト生誕祭と融合してクリスマスへと発展していく。

ユールでは冬至にユールログと呼ばれる大きな木の幹(巨大な薪)を燃やす火を囲んで、ご馳走を食べ、お酒を飲んで祝った。ユールログの炎は暗闇や寒さと戦う太陽の象徴でもあり魔除けの効果もあるとされた。このユールの風習はその後ヨーロツパの国々に広く伝わっていった。ストーブの普及で次第にこの風習は失われていったが、「ブッシュドノエル」としてユールログの形をした丸太型のケーキを食べる習慣が生まれ、現在でもクリスマスの定番のケーキとされている。

日本では冬至が厳寒の冬に向かう時期のため健康に配慮した風習が伝わっている。柚子湯に入ったり、かぼちゃを食する習慣である。

柚子湯は香りの強いものは邪気を被うと言われ、開運のために身を清める入浴の意味がある。かぼちゃは「ん」がつく食べ物で運が呼び込めるという縁起担ぎでかぼちゃ(南瓜・なんきん)を冬至に食べる習慣が残っている。しかし日本はヨーロツパより低い緯度に位置しており、冬至の暗さや日照時間の短さを北欧の人々ほど意識してはいない。

冬至は日照時間の特に少ない北半球の高い緯度に住む北欧の人々にとり、太陽光が力を取り戻す大切な日である。これから強まる太陽光への喜びや感謝の気持ちは日本人に比べてとても大きく、冬至を祝ってきたのだろう。
冬至が太陽の光が日に日に強まっていく始まりの日であると考えながら太陽の光を見ると冬の冷たい空気の中でも光にあたたかさと強さが感じられ、冬至を「太陽が生まれ変わる日」とした北欧の人々の気持ちが分かるような気がしてくる。