天の川

毎年七夕の夜は、織姫と彦星の伝説を思い出しながら空の星を眺める人は多いのではないだろうか。織姫星とされていること座のベガ、彦星とされているわし座のアルタイル、この二つの星は天の川をはさんで向かい合うように位置している。

この天の川は人間の歴史が始まって以来、不思議で神秘的なものとされ、様々な呼び名で呼ばれてきた。古代エジプトでは「天上のナイル川」、バビロニアでは「天上のユーフラテス川」、インドでは「空のガンジス川」など。

天の川が銀河系に属する多くの星々の集まりであることが分かったのは1610年イタリアのガリレオ・ガリレイの発見によってであった。彼はこう述べた。「私は天の川の正体と物質を観測した。・・・・・銀河は事実、一緒にかたまった無数の星の群れ以外の何物でもない・・・」

現在では私達地球が属する太陽系は、数ある銀河のひとつである「天の川銀河」の中に位置しているとされている。天の川銀河では太陽を含む約2千億個の恒星(太陽のように自ら光輝いている星)がブラックホールを中心に回っている。銀河の直径はおよそ10万光年で凸レンズ状の形をしていると考えられ、銀河系の中心部にはバルジと呼ばれる、厚さおよそ1.5万光年と言われる明るく輝く領域があり、その部分から外側に向かって腕のようなものが渦巻のように広がっている。銀河としての大きさは宇宙の中でも最大級とされている。

私達はこの銀河を内側から見ているために天の川が天球上の帯として見えると解釈されている。この光の帯は天球を一周しており、恒星と共に日周運動を行っていて1年中見ることができる。

天の川を見るには、月明かりの無い晴れた夜に、都市から離れたなるべく標高の高い場所に行くと良い。夏の天の川は南北に頭の上を越える位置に見え、これをまたいで夏の大三角形も見え、他の星も天の川周辺に多く見えて賑やかな夜空となる。

天の川の光は淡いため、月明かりや、人工光による光害の影響がある場合は確認が難しい。日本では1970年代以降(高度成長期の終了以降)天の川を見ることができる場所は少なくなってしまった。日本人の70%が光害のために天の川を見ることができないとされている。

光害がなく透明度の高い夜空が見えるオーストラリアの砂漠では、天の川の光で地面に自分の影ができるという。天の川が日本のどこでも美しく見えるような自然に優しい夜の明るさにするにはどのような生活をして光を調整するべきなのだろうか。皆さんも天の川のきらめく星々を眺めながら宇宙の一員としての人間の営みについて今一度考えてみてはいかがだろう。