光芒 – 光のパイプオルガン

太陽が雲に隠れている時、雲の切れ間や端から光が漏れ、光線の柱が放射状に地上へ降り注いで見える現象を「薄明光線」、または「光芒」と言い、「天使の梯子」とも呼ばれる。雲の切れ目の下に、雲を構成する水滴よりも小さい水滴が多数浮遊した状態で光が散乱されるとこのような一筋の光が見える。

この光景は他にも様々な呼び名がある。
旧約聖書ではヤコブが夢の中で、雲の切れ間から差す光のような梯子が天から地上に伸び、そこを天使が上り下りしている光景を見たとされており、「ヤコブの梯子」とも呼ばれている。雲の切れ目から差す幾筋もの光の帯は、あたかも天と地を結ぶ光の階段のようにも見える。

絵画や執筆、建築の世界でも光芒の繊細な美しさは、古くから芸術家達に感動やインスピレーションを与え、数々の芸術作品に描かれている。

17世紀オランダで活躍した画家、レンブラントはこの情景を好んで描いた為、「レンブラント光線」とも言われる。レンブラントの絵には、ドラマチックな光の部分と闇による部分との強い対比が描かれ、非日常的な雰囲気や宗教的な神々しさを感じられる作品となっている。18世紀後半から19世紀前半に活躍したイギリス人画家、ウィリアム・ターナーも光芒のある風景を描き、光、大気、雲をドラマティックに表現している。

日本では宮沢賢治が「告別」という詩の中で「光でできたパイプオルガン」と表現している。確かに美しい光の筋が差している光景は神々しく、荘厳なオルガンの音が聞こえてくるようだ。

又、建築の分野においては、ヴァチカンのサンピエトロ大聖堂では窓から太陽光の光が射し込んで光芒を作り出し、大聖堂の中は荘厳な威厳に満ちた雰囲気に包まれる。素晴らしいミケランジェロの光の演出だ。

 

「天と地を結ぶ光」のような印象を抱く薄明光線の景色は、太陽の角度が低くなる早朝、夕方に多く見られるという。季節に関わらずに見えるこの風景は、見る者の心を深く感動させる美しい天からの贈り物だ。

心が洗われる瞬間は人々にとって必要なものだ。人々は本来の自分に改めて気づき、涙をし、そしてより優しく寛容になって行けるのではないだろうか。