「光の世紀」に向けて3 – 太陽光利用型植物工場

近年、頻発する天候不順や異常気象、輸入野菜の急増、消費者の安全・安心への志向を背景に植物工場が注目されるようになっている。

植物工場とは内部環境をコントロールした閉鎖的または半閉鎖的な空間で植物を計画的に生産するシステムであり、安全な食料の供給、食材の安定供給を目的とした、環境保全型の生産システムである。そして植物工場において光は最も重要な環境要素となっている。

植物工場には太陽光利用型植物工場完全人工型植物工場がある。今回は太陽光利用型植物工場についてみてみることにする。

太陽光利用型植物工場は温室などの半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として雨天、曇天時の補光や夏季の高温抑制などを行う施設である。
太陽光型の施設では、主とする光源が太陽光であるため光熱費を低くすることができ、完全人工型の施設では栽培できない作物も栽培可能である。しかし光環境が天候に左右され、安定した生産は望めず、半閉鎖空間のため農薬も必要となり栽培場も広さが必要となる。

太陽光利用型植物工場は日本で1984年からみられ、2009年に国からの補助金拠出により2010年から建設が増加し、2015年度には大型の施設が全国10か所で稼働し始めている。

太陽光型の施設で主に栽培されている作物は果菜類が78%となっており、大規模な施設の例としてディズニーランドの例がある。
ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは安定して高品質の食材を確保できることを目的として山梨県に太陽光利用型植物工場を建設し、トマト、ミニトマト、パプリカを自社生産している。ディズニーランド、ディズニーシーの飲食施設における年間使用量を全て賄っているという。

太陽型植物工場では環境変化にきめ細かく対応することが必要である。具体的対策は光過剰(高温)の場合、遮光カーテン、換気、冷房を行い、光不足の場合、ガラスやフィルムの洗浄や汚れにくくする対処を行うなどである。オランダの施設の場合、いろいろな工夫により光透過率70~75%という高いものになっており、日本の施設の光透過率は50%程度と低く今後さらなる工夫を望みたい。

今後日本の農業の担い手不足は深刻な状況になると予想されている。対応策として様々なイノベーションが必要であるが、植物工場もその一翼を担うことは疑いない。
栽培を担っている生産者は新しいノウハウを積極的に取り入れて環境制御や栽培手法の開発を行なっている人も多く、太陽型植物工場のさらなる生産性向上に期待したいところである。