光と色彩 – ゲーテ

虹色スペクトルを発見したニュートンにより、それまで抽象的な存在であった光は屈折率によって数量的な理解が可能となりました。光が人間に与える数量以外の影響を認識し、ニュートンに反論したのが一般的には「若きウェルテルの悩み」や「ファウスト」で有名なドイツのヨハン・ヴォルフガング・ゲーテでした。
「色彩は光の行為である。行為であり、受苦である。」というまえがきから始まる「色彩論」は20年の執筆期間を経て1810年に発表されたゲーテの論文です。三部構成の形をとり、教示篇で色彩に関する己の基礎理論、論争篇でニュートンの理論への批判を、歴史篇で18世紀後半までの色彩論の歴史を記しています。

ニュートン光学は闇を研究対象としていませんが、ゲーテは「色はくもりの中にある」とし、色の生成に光と闇の両方の要素が必要と主張します。
また、ニュートンの直線的なスペクトラムとは異なる「色彩環」により色の対比を表現し、色が精神に与える影響をも考えたゲーテの理論はニュートンとはまた別の形で現代の私達の生活に影響を与えています。