脱炭素社会の実現に向けて14─デジタライゼーション


【該当項目】SDGsの各項目について照明分野からの働きかけ
③健康的な生活を実現する照明計画
④学びに相応しい光環境
⑤女性の活躍が輝く職場の照明
⑦省エネな照明計画
⑧ストレスフリーな職場の照明
⑨スマートシティに対応した照明計画 
⑪町に光で安全を⑫地球にやさしい光環境
⑬エコロジーな照明計画
⑰パートナーシップで明るい未来を
 
 
LED照明器具の出現により、照明にデジタル技術を取り入れて効率的で従来にない利便性を有する照明器具・システムが生まれて普及してきている。人・モノ・ビジネスを有機的に結ぶ照明の新たな価値創造を挙げてみる。

スマートシティの概念はAI及びビッグデータを活用して接続された全システムの統合、連携制御を実現して都市の低炭素化を目指すことである。
世界中で地球温暖化の影響や人口の都市集中化が進み、都市部のエネルギー消費の効率化を図ることは急務となっており、スマートシティはその解決策として期待されている。スマートシティにおいて街路照明は都市生活におけるあらゆる情報を収集する機能を持っている。その取得した情報は省エネルギー,大気汚染対策、交通の渋滞緩和など多くの領域の問題を解決へと導くことができる。街路照明は照明本来の機能だけでなくスマートシティの基盤としての機能を持つものとして重要な位置づけとなっているのである。
また、ビルの管理システムの変遷をみてみると、現在より約20年前に通信とデータが同じネットワークに統合され、その数年後に入退管理及びセキュリティ監視機能が統合されるようになった。そして2000年代の初め以降、ビルのネットワークに統合される機能は年々増加し、スマートビルはより効率的で管理が容易なものとなってきている。
ビルに設置された照明器具に付帯したセンサーにより取得されたデータは、保存、管理、分析をし、ビルの省エネルギー、良好な就業環境の創出などに利用され、ビルの運用効率を上げ、空間を最適化することができる。オフィスの照明や空調をパーソナライズできるようにしたりすることで職員の生産性を向上させたり、利用状況に応じた空間の演出を行ったり不必要な照明は消灯するなどの効率化を図ることができる。
商業店舗においては照明の光通信を利用してユーザーに位置情報サービスを提供すると共にユーザーの動きから求める商品情報をメッセージで送るシステムも生まれ効果を上げている。

また、街の価値や経済効果を高め、観光客の増加や商業地区の活性化に大きく貢献することができるシステムが生まれている。このシステムは都市のライトアップに活用することで照明の管理、モニタリング演出の調整に加え、その照明に対する社会的な反響を一元管理することができ、新たな価値創造を生むものとして今後期待できるシステムである。
スマートホームでは、照明器具がスマートフォンによりユーザーが調整可能となり、他の設備機器などと連動した便利で効率的なシステムを構築することができる。付加価値を備えたスマート照明によって便利で豊かな生活を創造できる。スマートホーム内においては設備稼働状況の見える化により、省エネルギー効果を得て脱炭素化に貢献することが可能である。

植物工場は、LED照明を利用し、天候に左右されることなく、安定的、衛生的に植物生産を行うことが出来るスマートファクトリーの一つである。都市の空きスペースなどに設置可能で、産地からの輸送エネルギー削減にも貢献でき、環境の負荷が少ない脱炭素社会に適した持続可能な農業として注目されている。LED光源はその波長により植物の成長を調整することが出来、効率的な植物育成を可能とした。脱炭素社会の一端を担うものとして植物工場は今後さらに普及していくと予想されている。

デジタル化により照明の持つ可能性は他業種との連携において今後さらに広がっていくことだろう。