脱炭素社会の実現に向けて16─これからの照明デザイン


【該当項目】SDGsの各項目について照明分野からの働きかけ
③健康的な生活を実現する照明計画
④学びに相応しい光環境
⑤女性の活躍が輝く職場の照明
⑦省エネルギーな照明計画
⑧ストレスフリーな職場の照明
⑨スマートシティに対応した照明計画
⑩豊かな感性を育む光
⑪街に光で安全を
⑫地球に優しい光環境
⑬エコロジーな照明計画
⑯あたたかな光で心に平和と公正を
⑰パートナーシップで明るい未来を
 
 
脱炭素社会への実現に向けて日本は技術的なエネルギー問題に加えて、超高齢社会への対応、またコロナ禍による人々の意識の変化や生活の変化に応じた社会への対応など多くの課題を抱えて進まなければならない。

脱炭素社会の実現に向けて照明器具の側面からは、照明機器の省エネや環境に優しい素材の追求など脱炭素化への働きかけに力を注がなければならない。そして照明デザインの側面からは、照明制御システムの利用などにより省エネを図ったデザインを進めていく必要がある。その時に忘れてならないのが、照明によって人間の生活空間を美しく健康的で心豊かな生活に演出していくことである。

近年、照明の光が人間の気持ちや体の新陳代謝、睡眠の質、幸福感、快適感、ストレス軽減など多くのことに影響を与えることが分かってきている。照明器具は単に光を発するだけのものではなく、他のテクノロジーや自然と連携した新しい生活のツールになってきている。照明が人間の生活をより便利で快適で幸福感と充実感に満ちた豊かな生活にする新しい価値を持ったものになってきているのである。

照明の光の質は,従来,主に色温度や演色性,配光などについて考慮されてきた.しかしこれからは心理や健康など,人間の感情や身体に光がどう働きかけるかについても重要な要素として意識されていくことだろう.そして人の感情や心身の状態,個人のライフスタイルに合わせて変化可能なものとして,よりパーソナルで高度に制御される照明が求められていくのではないだろうか.

脱炭素社会の実現に向けて様々な課題を克服し解決していこうとする社会において,省エネルギーに貢献することを基本に,人々の気分や健康を促進し,職場や学校での集中力を増進し,安全性と効率性を向上し,病院や介護施設での自然治癒力までも向上させるというような人に寄り添った光を実現することが必要であると考える.

照明の多様な価値を正しく評価しながら脱炭素社会に向けた動きを推進し,豊かで幸福な生活の営みが実現することを目指して照明デザイナーとして照明の光を「価値ある光」として提案し続けていきたいと考える.