ゴシック建築の光 (4) – ステンドグラス②

薄暗いゴシック教会の中を満たす光は、ステンドグラスを通る太陽の光によって、豊かな光の表情を見せる。
ステンドグラスによって物質的な光は神秘的な光に変わり、堂内は人々の心を聖なるものへと導く光の空間となる。

見上げるほどのクリアストーリー(高窓)のステンドグラスからは日中の太陽の動きによりその差し込む光の角度が変化する。堂内に光が落ちる場所も祭壇であったり、彫刻であったりとその場所が変わり、また、光の表情も移ろい変わる。そして季節や天候によっても光は微妙にその明るさや強さや色合いが異なる。太陽光による見事な光の演出である。

ステンドグラスには聖書や聖人の伝記から取られた物語が描かれており、人々は聖職者の説明を聞きながら描かれた絵を眺めて信仰を深くしていった。ヴィジュアルなものは言葉だけよりも理解しやすく記憶にも残りやすく、人々に働きかける大きな力がある。

建設当時のステンドグラスがほぼ完全な姿で残っているのがフランスのシャルトル大聖堂である。大聖堂の中には173個のステンドグラスがあり、3個のバラ窓にはキリストを中心とする宇宙観が表されている。

どれも美しい絵柄と色彩だが、特にシャルトル大聖堂のステンドグラスの深く青い色は美しく、特別に「シャルトルブルー」と呼ばれている。この色は着色に使われた金属酸化物が不純物を含んでいること、ガラスの表面が平面ではないことから、複雑で微妙な色彩を醸し出しており、現代では再現が難しい貴重な色となっている。

ゴシック教会の高い天井による上へ上へと引き上げられるような浮遊感、ステンドグラスによる闇にきらめく様々な光のたゆたい…
美しい光に彩られたゴシック教会堂は、光によって神を感じる神聖な空間として、これからも人々の心を照らし続けていくことだろう。
 
 
Image by SF Brit