目と光 (1)



―サーカディアンリズム-

人間は情報の約80%を視覚から受け取っている。そしてその情報は光と密接な関係にある。

人間の体は地球の自転による24時間周期に合わせて、体温や血圧、ホルモンの分泌など、体の基本的な働きを約24時間のリズムで変化させている。この約24時間周期のリズムをサーカディアンリズム(概日リズム)と言う。 このサーカディアンリズムは体内時計によって刻まれているため、体内時計が乱れると、さまざまな生体リズムも乱れると考えられている。

体内時計は環境により影響を受けるが特に大きな影響力を持つのが光である。

日中に十分な光を浴びると夜メラトニンという睡眠を促進するホルモンが分泌され良質な睡眠に繋がる。しかし夕方から昼のような白く強い光を浴びたり、液晶画面から出るブルーライトを浴びるとメラトニンの分泌を抑えてしまい、睡眠の質を落としてしまう。

サーカディアンリズムを崩さないようにするには、人の生活リズムに応じて最適な色温度、照度、の光を浴び、睡眠前にパソコンやスマホの画面を見ないようにするなどの配慮が必要になってくる。

朝は色温度の高い光で覚醒を促し、昼は活動を活発にする光、夕方から夜にかけては色温度の低い色で落ち着きを促し、本来の生態リズムにのっとった生活を照明で実現することが望まれる。

光の色温度と明るさの組み合わせにより人体にもたらす心理的効果は異なる。色温度が低いと低照度が快適で、色温度が高いと高照度が快適となる。調色調光システム人により、心地よく感じる明るさと色温度の組み合わせを日常の生活に取り入れることで生体活動に規則正しい光のリズムを取り入れることができる。

LED照明の登場により、調光だけでなく、調色が可能となり朝から晩までの光環境を自由に設定することが可能となっている。これにより、光環境の設定バリエーションが豊かになり、光と人間の関係をより創造的で健康的なものとすることができる可能性に満ちた状況になっていると言えるであろう。
しかし、近年問題になっているのが、ブルーライトがオフィスや生活空間にあふれていることによる体内時計の乱れであり、健康被害と目への影響である。

ブルーライトは波長が短く、散乱することにより画像のぶれやちらつきとなり、目はピントを合わせようとして疲労する。また、ブルーライトは強いエネルギーを持ち、刺激性が強いため網膜疾患などを引き起こす原因にもなってしまうことが分かっている。

様々なブルーライトの影響を知ることで、ブルーライトと上手に付き合い、コントロールをして自分の目や体を守ることが大切である。そしてサーカディアンリズムに則した暮らしや健康を考慮した上で照明を上手に調整して健康的で豊な生活を送るようにしたいものである。

photo by Jeff Turner