光と精神 (3)

光と精神3―高齢者と光

Light+では以前高齢者への照明について取り上げ、高齢者の視覚特性に応じた照明計画の必要性と対応策を記載した。今回は、光による治療法で認知症患者の生活を改善することについて取り上げてみる。

認知症の患者は、脳の機能的な障害や衰弱により生体リズムの乱れ、昼夜逆転現象、徘徊、せん妄などの異常行動が見られるようになる。これらの行動は本人の負担に加え、家庭や療養所の介護者の負担を大きくしてしまう。

高照度光療法により認知症の人の治療を行うと、症状の進行は止まらないが、様々な症状が改善されるということが分かっている。睡眠と覚醒のリズムが整えられることにより、サーカディアンリズムを改善でき、夜間の徘徊が改善されたり、落ち着きを取り戻したり、せん妄が消えたりという効果が期待できるという。ひいてはそれが本人及び介護者の負担軽減につながる。

一般的な高照度光療法は、2500ルクス以上の強い光を2~3時間連続して基本的に毎日浴びることにより、サーカディアンリズムを整える治療法で、昼夜のメリハリある生活を実現する。睡眠のリズムを改善するだけでなく、ホルモンの分泌、代謝のリズムなど身体全体のリズムを整える効果も得ることができると言われている。

認知症を患う方々とその介護者の方々の負担軽減が実現できるこの光の治療は、既に施設などで取り入れられている。光を浴びる時間が長時間に及ぶことや治療を継続していかないと効果が続かないという問題などがあるが、この治療法が広まることによってより多くの患者と周辺の人達が救われ、より良い生活に繋がると良いと考える。

photo by Franck Michel