光と精神 (5)

光と精神5―光・色と心理

今回は照明の光や色が人間の心理に与える影響について取り上げる。

空間の演出は光の色温度により可能である。色温度の低いオレンジの光は、くつろぎや安らぎ、暖かさを感じ、リラックスして落ち着きをもたらす。
色温度の高い白い光は覚醒して活動的になり、さわやかさを感じ気持ちが引きしまる。

人間が空間に対して居心地の良さや悪さを感じるのは照明の照度と色温度に関係している。
白い光は高照度では快適だが、低照度であると陰気で寒々しい雰囲気を感じる。
電球色の温かさを感じる光は、低照度では快適だが、高照度では暑苦しく不快を感じる。
このように照度と色温度の組み合わせで快適さが異なる。

また、照明が照らす場所に応じて以下のような様々な心理効果を得ることができる。
天井面を照らすことにより、空間の圧迫感をなくし、開放感や高級感、落ち着きも生まれる。
目に多く入る壁面を照らすことにより、暗い場所でも明るさを感じたり、安心感を得られる。
床面では低い位置を照らすことにより、安らぎやくつろぎ、落ち着きを感じることができる。床が光って非日常感を感じ、飽きない空間になるとも言われている。

照明の光は色により、心理的にも生理的にも影響を与える。
青い照明の下では、涼しさを感じ、5分以内に皮膚温度が2度下がり、脈拍はゆっくりになり、リラックスする時に出る脳波のアルファー波が増えるという。(カネボウ美容研究所)
黄色の光は、神経や皮膚、消化管系に好影響を与えると言われている。

フルスペクトル照明に関する興味深い報告もされている。
アメリカフロリダ州の小学生の教室を観察した結果、クールホワイトの蛍光灯の教室の子供達に比べ、蛍光灯からフルスペクトル照明に替えた教室の子供達は精神的にも落ち着き、成績だけでなく子供達の態度が著しく良いものに変化したという。
フルスペクトル照明に替えることで職場のストレスが減少し病欠者数も減るという報告もあり、光の与える影響が大きいことを示唆している。

光や色から人間が受ける心理効果は、体感としてだけでなく、行動レベルにまで影響を与える大きなものと言うことができる。その効果をふまえた上で快適性や利便性を高める環境要素として効果的に光や色を利用していきたいものである。

*フルスペクトル照明――自然光のスペクトル分布に近いスペクトルの分光分布を持った人工照明

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