光と精神 (6)

光と精神6―太陽光1 人間との関わり方の歴史

太陽光は自然界に生きる植物、動物にとって、なくてはならないものである。私達は太古の昔から、太陽の光の下で生活を営んできた。太陽光は、万物の成長を促すだけでなく、人間の健康や精神性にまで多くの影響を与えている。

太陽光と健康に焦点をあて、人間が生活する空間における太陽光と人間の関わり方の史実や、照明としての利用の仕方などについてこれから3回に分けて述べてみたい。

太陽光と人間の歴史をみると、古代文明やエジプト文明では全ての生命の源として崇拝し、健康維持、病気の治療に利用していた。

古代ローマの博物学者ブリニーは「太陽は良薬である」と言い、痛風、リウマチ、皮膚病などの治療に日光浴を利用していた。
古代ギリシャの歴史家であり、太陽療法の父であるヘロドトスも「日光浴は健康を回復したい人には欠くことができない」と日光浴を推奨していた記録が残っている。
他にもインドやペルシャなど多くの地域で太陽光が人々の健康を支えるものであるという認識は古くからあり、信じられていた。

また、太陽光と人間の住む空間については、古代から人間は太陽光を取り入れた建物は病気を予防し、幸福感と健康を促進することを経験的に知っていた。
ギリシャ・ローマ文明ではうつ病患者は光が満ちた部屋に住むと良いとされ、古代ローマでは浴室の他に「日光浴室」も設置され尊ばれていた。イタリアには、「陽が差し込まぬところに医者が来る」ということわざがあり、昔から健康のために空間に太陽光を入れる大切さを認識していたことが伺える。

このような太陽光に対する意識は、人類が進歩するにつれて薄らいでいったと言える。人工照明が発達し、産業革命時代になると効率性のみを求めて最低限の人工照明による光環境の労働環境が増え、健康を害する例も生まれてきた。

20世紀以降、このような現象に警鐘が鳴らされ、人間の健康や心理に太陽光が重要な働きをすることが再認識されるようになり、省エネの観点からも昼光照明を建築に取り入れる動きが見られるようになっている。

太陽光の持つ様々な効用は体験的に古くから知られ、人間はその効用を利用してきた。科学的にその効用について解明が進んだ現代において、太陽光をより効果的に利用することで
さらなる私達の心身の健康増進に役立てていきたいものである。

photo by truds09