デジタライゼーションと光─Li Fi(1)

「Li-Fi」は「Light Fidelity」の略で、目に見える光を使って情報を伝達する技術である「可視光通信」(VLC:Visible Light Communication)の一種である。LiFiはLED照明によるデジタル無線通信であり、人の目にはわからないほどの超高速でLEDを点滅させることにより、光をデジタル信号に変えてデータを送信して通信を行う。※1

Li-Fi は2011 年、ドイツ人物理学者ハラル ド・ハース(Harald Haas)教授により世界に紹介された。ハース教授の構想は、 世界中にある 140 億個の電球を、マイクロチップを取り付けることで無線 LAN ルーターに変えることであった。その後ハラルド氏は企業を立ち上げ、LiFiの製品開発を進めている。※2

海外では広く活用が進んでおり、日本国内でも2019年にはLi-Fiに対応した照明器具が発表された。また、広くLiFiが普及するためには必須となる標準規格化に向けた動きも進行中である。※3

LiFiの特徴についてWiFiとの比較をしながらみてみる。

・通信スピード
LiFiは1G~10Gビット/秒の速度でデータ通信が可能とされる。これは現在のWiFiの10~100倍の速度となる。

・障害・制限
可視光による通信のため、伝播環境への影響はない。電波の鑑賞・混雑などの影響を受けないため安定した通信が可能である。

現状のWiFiは主に2.4 GHzと5GHzという2つの周波数帯が使われている、これらの限られた周波数帯に通信が集中すると電波干渉が起こってしまう。

家庭やオフィスにあるLED電球の光を利用するLiFiでは、光を通信媒体とするため、WiFiなどの無線周波数と干渉しない。しかも、LiFiが利用する光スペクトルはWiFiで利用される無線周波の1万倍もの情報を扱うことができるため、障害や制限なしに、より高速且つ、安定した通信を実現できる。また、現時点では可視光スペクトルのライセンスは不要で、容易に設置することができ、帯域を増やすことが可能である。

・安全性とセキュリティ
WiFiによる通信では、電磁波が発生するため精密機器などに影響を与える場所での使用は制限されてきた。しかし、光での通信を行うLiFiであればそうした障害が起こる心配がない。また可視光を利用するため、人体には無害である。

・エネルギー効率
WiFiを世界中の人が使用するためには、大量のエネルギーと膨大な数の基地局を必要とする。 LiFiは、光源をLiFiに対応したLED電球に変更するのみで基地局を必要としない。
受信機としてのスマートフォンやPCには新たに専用の受光装置が必要ではあるが、長寿命かつ省エネルギーなLED電球を送信元とするLiFiは地球環境にやさしいシステムであると言えるだろう。

・位置情報サービス
LiFiネットワークでは、LiFiに統合された照明に固有の識別子が利用されるため、位置情報を管理することができ、その位置情報は精度の高いものとなっている。

様々な利点のあるLiFiはまさにこれからのIoT化が進む社会に必要なシステムと言えるだろう。

※1 先端技術キーワード解説Li-Fi. ティー・エム研究所. http://tm-lab.a.la9.jp/useful/ekeyword_19-05.pdf
※2 「照明のちらつき」はリアル店舗を救うか―LEDの明滅を用いたフィリップスの屋内ナビ技術.https://wired.jp/2017/03/21/led-indoor-positioning-system/
※3 Wi-Fiよりも圧倒的に速い「Li-Fi」―LEDの光で超高速通信が出来る時代に. 野村證券.https://www.nomura.co.jp/el_borde/view/0034/