光のパブリックポリシー4 夜間景観照明1

日本では高度経済成長が進むと共に、各地で景観の乱れが目立つようになっていった。先進的な地方自治体では、自主的に「景観条例」の制定等を通じて景観の見直しに努めていたが、法律の後ろ盾がないため、その強制力に限界があった。

一方、国民の間には環境問題や生活の豊かさへの関心の高まりや景観形成に対する意識の向上が見られ、景観に関する訴訟が増加するようになった。そして日本の景観を見直そうとする機運の高まりから行政法規に基づくルールづくりの必要性が認識されるようになり、2016年に「景観法」が施行された。*1

景観法は良好な景観の形成を実現するため、「景観計画」の策定や景観計画区域内における建築物の建築等に関する規制、景観重要建造物や樹木の指定、都市計画による景観地区の指定などについて定めている。

景観法制定以前には「景観条例」が景観計画の基となっていた。景観条例は、地域の特徴的な景観を保全・修景することを主眼にしており、「景観の魅力」を構成する建造物のデ ザイン誘導などに主に関心が寄せられていた。しかし景観法はそれまでの「景観の魅力」に 加えて,「まちの魅力」を付加するような景観創造を目指している。*2

景観法の景観計画において、照明計画は夜間景観形成の重要な要素となっている。適正な照明計画による美しい夜間景観は、豊かな生活環境を創造し、個性的で活力ある地域社会を実現する。

美しい夜間景観は、見る人々に感動や喜びを与えると共に安らぎ・癒し・希望を与え、地元の人々には地元への愛着や誇りを生み出す効果があることが知られている。そして地域の活性化と大きな経済効果を生み出すことに繋がっている。

また、建物本体のみのライトアップだけではなく、広い範囲をまとめて光で演出する事例も増えており、夜間景観を総合的に演出し、その効果を最大限に活用できるようになってきている。

最近では、夜間照明がメッセージを届ける役割を担う事例も出てきている。世界中で行われているコロナの医療従事者への感謝を表した建物の青色ライトアップや、ウクライナ侵攻に関して、犠牲者への追悼、平和への祈りを表す青色と黄色のウクライナの国旗色のライトアップがその例である。夜間景観の中に新しく光のメッセージの機能が生まれ始めているのである。

これからますますその重要性が高くなることが予想される夜間景観照明について次回より考察していく。

■参考文献
*1  http://www.mlit.go.jp/toshi/townscape/crd_townscape_tk_000011.html
*2  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jieij/102/2/102_170000560/_pdf