WELL認証2─概要

WELL認証は2014年にアメリカで発表された利用者の健康に焦点を当てた空間評価システムである。従来の空間評価システムに比べて建築物内で過ごす人々の心身の健康や快適性を重視しており、医師や科学者、専門家の協力を得て多角的な研究を基にして7年間をかけて開発されたものである。

認証プログラムはv1(vol1)とv1を改良して2018年に発表されたv2(vol2)プロトタイプがあり、現在は平行して運用されている。将来的にはv1の登録は終了する予定になっている。

WELL認証は「身体的、精神的、社会的に良好な状態=ウェルビーイング」を重視しており、あらゆる人々にとっての健康的な建物の促進を目指している。そして基本的な健康要素である「病気にならないこと」だけでなく、私達が満足し幸福を得られるような生産的な人生を楽しめる空間づくりに役立つことを目的としている。

v1の審査項目は7つの基本コンセプト(空気、水、食物、光、フィットネス、快適性、こころ)となっている。

v2はあらゆるプロジェクトに対応するようにしたもので審査項目は10の基本コンセプト(空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、心、コミュニティー)となっている。

v1,v2いずれも評価項目は必須項目と加点項目に分かれており、獲得点数によりプラチナ、ゴールド、シルバーの3段階で評価される。

日本の社会では働く社員の健康や生産性を向上させることなどへの関心は年々高まっており、平成26年に厚生労働省により「社員のストレスチェック」が義務化され、平成30年には「働き方改革法」が施行された。また、経済産業省は健康経営に取り組む企業を「健康経営銘柄」として評価するなどして「健康経営」を推進している。

一方、価値観が多様化している現代社会において、求職者は自分らしさを尊重しながら快適に仕事をすることができ、ワークライフバランスの取れる企業を求める傾向が強くなっている。企業の社会や環境に対する取り組みや、建築物やオフィス環境に対する姿勢に対して求職者の視線はより厳しいものとなっていると言えるだろう。

現在、WELL認証は、社員のメンタルヘルスや仕事へのやる気、企業への愛情といったものでを含めた概念のもと、健康経営の考え方をさらに推し進め、より快適な空間創造を実現するための指針として世界50か国以上で活用されている。今後日本においても働く人の健康や快適性に着目した建築物への意識は高まっていくと予想され、企業が働く人の心身の健康に配慮しながら生産性を高めていく建築空間の実現のためにWELL認証を活用していくことが望まれる。