WELL認証5-照明デザイン

照明デザインにおいては、空間を単に明るくして物を見やすくするのではなく、空間の質を高め、人間が居住する空間として身体的、精神的、社会的に良好な環境となるような光空間に作り上げることを WELL認証の創設以前から行ってきた。今回例として当事務所が照明を担当した「東京アメリカンクラブ」(略称TAC)の照明デザインを紹介する。

TACは1928年に設立された歴史ある高級会員制の社交クラブである。アメリカ人と日本人を中心に52ヶ国に及ぶ約5,000名のメンバーと約12,000名の家族会員からなり、文化交流の社交場として運営されてきた。2012年に東京の麻布台に新しいクラブハウスが建設され、その照明デザインを当社が担当した。

TACの照明デザインはいかに空間の中で人がくつろいで快適に過ごせるかを追求しており、WELL認証で推奨する項目に通じたデザインとなっている。また、日本人とは異なる光に対する感覚を持つ外国人も多く来訪するため、光の刺激が強いものとならないような配慮をした計画となっている。

WELL認証では光暴露によるサーカディアンリズムの乱れを防ぐようにという項目がある。目に侵入する光と光のスペクトル特性、明るさのレベル、暴露時間およびそのタイミングなどの要因がサーカディアンリズムに影響するとしている。

TACでは来訪者が集うラウンジの広いガラス面からの太陽の日射を昼光センサーを利用してカーテンを開閉することで自動調整できるようにしている。そしてラウンジの照明は、アジャスタブルのダウンライトやスタンドライトなどを使って細かな回路分けをして調光コントロールをすることでラウンジで過ごす人を包む光環境を最適なものにできるようにしている。時間や季節に応じて、ラウンジでの使用目的に応じてと多彩な利用の仕方に適応した演出ができるような光環境としている。

一般的に欧米人は光に敏感で、住宅においては夜はあまり明るい照明よりも少し暗めの照明を好む人が多い。TACでは照度を低い設定から高い設定まで調節可能にしており、来訪者が好む雰囲気を演出できるようにしている。WELL認証ではビジュアル照明デザインとしてすべてのユーザーに対して照明を通じて視覚的な快適さを提供し、視力を強化するという項目があるが、まさにTACではそれに沿った照明デザインを行っていると言えるだろう。